月の嗤うさき ー第二稿 /……とある蛙
き摺り戻されないよう
猿の名はイザナギ
天を指さし直立した猿
沼地から離れずにいたがついに
離れる決意をし、池だった頃の面影のない沼を棄て、
係累から疎まれていた彼に後悔はない。
歩いて歩いて歩いて歩いた。
あるいてあるいてあるいてあるいた
彼の行く手を阻む森の影
彼の目を眩ます霧の魔物
彼の鼻腔を破壊する強烈な腐敗臭
彼の耳元で囁かれる断末魔の呟き
彼の足下を掬う臭気のある泥腐敗物
彼の頭上には青い月明かり
ほうほう と鳴く梟は山の猖獗
闇の怪物の分身だ
ホウホウ
ホウホウホウホウ
ホウホウ
夜道に灯
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