月の嗤うさき ー第二稿 /……とある蛙
咆哮する類人猿
じっと視線をこちらに向けたまま
直接頭に語りかける。
落ち着いた意識で
しかし
イザナミ?
私はイザナミでは無い。
おまえは最初のヒトではない。
歩き疲れた猿ではないか。
私はおまえを知らない
私はおまえと何を語ればよいのだ
おまえの子など孕めない
片端しか
突然穏やかな意識は荒れ狂い
意識の中ですら
砂嵐のような混乱
イザナギは叫ぶ
もういやだ。
もう二度と歩かない
なぜ歩かねばならないのだ。
俺はおまえに会えと言われた
だが俺はおまえを知らない
おまえは俺を知らない。
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