リストの指 /服部 剛
 
名曲喫茶の壁に掛けられた 
額縁の中で 
貴公子のようにすっと立ち 
時を越え、こちらをみつめる 
リストの目 

(こちらに来なさい・・・ 
 世を去った私達の賛歌に耳を澄ましてから 
 そちらに戻りなさい・・・ 
 そうしてあなたは 
 唯一無二の歌を奏でる者になるだろう  ) 

胸に手をあて、跪き 
リストの声を聴いていた 
僕の落とした目線の先に 

曇り硝子から射す日に照らされた 
リストの指は、生々しく 
今にも動き出しそうだ 






 
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