オマージュ?/Giton
 
ればならない‘自然’条件、つまり、農業の格闘の現場である《大地》と気象水文条件、経済条件、農村社会条件のことなのである。
かつて共に、牧歌的な農村改革の夢を語り合った「はるかな友」──保阪嘉内をはじめとする高等農林の同窓生ら──に対して、賢治は、そうした理想の持つ「恐るべき他の面を知るか」と言っているのである▽。
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▽(注) 菅原千恵子『宮沢賢治の青春』,1996,角川文庫,pp.238f.
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こうして、《大地のファウスト》は、己が青春の夢を、己が死をもって償ったのであろうか。
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 くもにつらなるでこぼこがらす
 はるかかなたを赤き狐のせわしきゆきき
 べっかうめがねのメフィスト
   (『冬のスケッチ・補遺』より)◆
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◆(注) 「赤き狐」「べっこう眼鏡」は、農民たちに改良を勧める有識者や官吏たちを指すとも解しうるであろう。
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