シルフィード/いとう
 

さよならの温度が肌に絡み
満月が揺らぐので私は
消えていったあなたのために
右の頬を撫でてあげる
幾たびも満ち欠けを繰り返すあなたに
満月は寄り添うので
もうそれ以上
満ちることはない

祈らない
微笑まない
誰のためにも

おはよう
おはよう
右の頬を撫でてあげる
ベッドの中で二人
右の頬を撫でてそれだけで満ち足りた二人を
失ったのではない
消えていったのだ
満月を寄り添わせ
肌に絡み
私に寄り添うあなた
だからもう誰のためにも
私は祈らない
私は微笑まない
もうそれ以上
欠けることのないあなたの
右の頬を撫でてあげる
揺らぐ満月を見上げて
右の頬を撫でてあげる






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