静寂は長い叫びと似ている/ホロウ・シカエルボク
きてしまう
ひとりひとりまたひとりと席を立って残されたテーブルで
残していくものを持ち合わせていない歯痒さをよく夢に見る
家の鍵を開けると
俺の預かり知らない時間の蓄積が部屋から流れ出して来る
俺は彼らの占拠から部屋を取り戻して
汚れた身体をシャワーで長いこと洗い流す
排水溝へ流れ込んでいく俺のいくつもの喪失は
閉ざされたシャッターが並ぶ通りとよく似ている
ガスコンロに火を灯して
インスタントコーヒーを入れる
決して言葉に出来ない何かを思い出す
そんなものを誰に話すつもりで抱えているのか
思い出しても思い出してもそのことだけは思い出せない
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