梢の記憶と杏色/智鶴
 
もしも違うなら
君は誰だろう
あの子が探していた人だろうか
居なくなってしまったあの人だろうか
それとも、何かを知るにはあまりにも
大人になりすぎた僕だろうか

君が座った木陰は虹色で
杏の匂いが酸っぱく立ち込めていた
途中で落した夜は拾い集められないし
拾いそびれた世界はそのまま
僕は君を忘れていくんだろう

昔、母親の居ない隙に
昭和時代のCDを聞いた
母親が、僕の懐かしむ歳だった頃の
誰もが知ってて僕の知らない
古い洋楽は歌詞が分からなくて
僕には砂場の記憶も呼び覚まさなかった

大人が記憶にしがみつくのは
もはやセピアに薄れてしまった世界を
思い
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