つややかリップ/
千波 一也
高層窓には
飼い馴らされた
セレモニー
夜毎
あどけない肯定が
滑らかになる
背筋は
かたいまま
柔らかな囲いは
重たくなって
屋上からの月はなお遠い
一度、
フェンス越しに
口付けておくべきだった
信用ならない約束を
交わすべきだった
ルビー、と発する
唇のぎこちなさ
そこに
研がれそこねた海がある
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