河の匂い/古代 透
 


 木立からうまれた
 馬たちは渓谷の水を
 跳ねて
 氷の粒のような
 白い息を吐いていた
 
 やさしさからうぶ声を
 晩秋の空にあげた
 手のひらの沈黙を
 コートのポケットにしまう

 河の匂いが
 あまりに大きすぎて
 目をそらしてみたけれど
 そっと
 鼻孔の底から
 流れてきて消えない


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