【批評祭参加作品】おーい、そろもん!/佐々宝砂
く、その行為が、私は嫌いではない。日の下に新しいものはない、とすでに旧約聖書「伝道の書」は述べているが、それが事実だとしても、私たちは何か書かずにはいられないのだ。
もうひとつ私の好きな作品をあげておこう。わりと最近の作で、まだあまり人気のない、こんなもの。
>「そろもん(黒い森の話)」
>
>城壁の外側は 黒い森
>魔ものが潜んでいます
>その周辺と全部の夜は かれのもので
>子どもたちは 夢のなかに
>ランプを吊るして眠ります
この短詩からは、魔法の匂いがする。ゲームの世界の魔法ではない。黒い森の魔法だ。確かに闇につながってゆく魔法だ。夢のなかにすら侵入してくる黒いもの。私はその黒いものの後ろ姿くらいなら見たことがある。でもそれ以上は見たくない。見ないほうが安全だと思う。
「そろもん」の背後に広がる森は深い。入り口はいくつもあり、どれも間口が広い。だが内部は迷路になっていて、出口はたったひとつ。私は出口を見つける自信がない。あなたには、あるだろうか?
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