基礎に埋めたぜんまい/乾 加津也
の汗をかく
ホース伝いのソイルセメントマシン 親方のストロークの進捗を見守り
セメントと水の配分 及び生成されるミルクの粘状には
攪拌スイッチと足元の開閉レバーのタイミングで抜かりはない
だが
命令ばかり 常に怒鳴り散らされ
おまけに時代は建築ラッシュ
出退勤不安定な毎日に食われるうちに
少しずつ
わたしの奥の向日葵はしなだれていった
炎天の日が続き
めまいとともに力が失せ
薄れる意識の中で作業台から地面に倒れ落ちた
まっすぐに
雲だけ見える空の下から
かすかに親方の罵声が聞こえたようだが
もういいだろう
その時はじめて
捨て鉢を知った
体のぜんまいがすべて緩んで
舌先が軽く浮いたようだった
+ + +
そこにはだれかの住まいが建った
平凡でも静かで 温かな家であってほしい
いまも心からそう思う
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