夜と白 ?/木立 悟
 



見えない羽の
影だけがゆく
屋根の声 水の壁
土の壁が吐く
赤い花


午後から暮れに降る光
影から影へ流れる川を
何かの波がさかのぼる
がさがさとした
爪のはざま


むらさきに散る
雨の待ち伏せ
跡を残さずとどまらず
ひとつの花のまわりから去る


歯車より軽い街が
眠りのうちに動いても
魂も骨も 波も心も
同じ土と火を踏みしめる


音は音のままだという
着飾ることはないのだという
夢を夢に傾けて
片目は常に みなもとを見る


こがねの螺子が背に刺さり
蜥蜴を蜥蜴に廻しゆく
風は集まり 花より小さく
花の上に手を結ぶ


霧に溶けていたものが
徐々に姿を取りもどし
はばたきとはばたきは会話する
空に到くことなく散りながら
くりかえしくりかえし散りながら


道に流れる足跡を
鉛と金が追い抜いてゆく
弧を閉じこめる水銀の目に
冠は白く降りそそぐ


























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