汽笛/
川上凌
冷たい潮の香りが怖い
蚕(かいこ)のように丸くなって
意識を沈めよう
聴こえるは 船の汽笛
朝には赤道近くまで 行くのだろう
こんな寒い夜は 誰かの温もりに
抱(いだ)かれて眠りたい
あ また 汽笛が聴こえる
誰かに頼らず生きる
と決めた心は 壊れやすく脆い
決心はあっけなさすぎ
こんな自分が嫌い?
あ また ひとつ汽笛が聴こえた
独り寝の夜は淋しい
ただひとつ、
握りしめた携帯の温もりに
ちょっとだけ救われた冬の夜
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