ツブリ・ベブル・バルレ/ホロウ・シカエルボク
腐食の挙句ぽっかりと空いた穴から時を刻むように漏れ始めたどろどろのどす黒い液体のような世界だ、さあ御覧、夜にだけ動き出す狂った器官の稼働するさま、ああ、数時間前の紺碧の空の幻視、本当だったのになぜこんなに簡単に亡きもののようになってしまう、本当だったのになぜこんなに…子供のころからごっそりと欠損したままの奥歯の中心に執拗に居座る夕食のかけら、就寝のあとの激しい悪夢を予感させて、爪楊枝で懸命に掻きだしたら歯茎からとめどなく血が溢れた、粘菌のようにそこここにへばりつく血液…ティッシュ・ペーパーで受け止める落度、どろどろのどす黒い液体みたいな落度、赤く染まったそれをダストボックスに放り込んだのは
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