齧りかけの林檎/AB(なかほど)
 
っかり色を無くしてしまい
ただの林檎
       にもなれない


4 立ち読み

あのひとは童話作家になっていました
わたしは嬉しくて嬉しくて嬉しくて
何度も何度も何度も読み返して
そらでつぶやけるほど
何度も
でも 
その
齧りかけの林檎の挿し絵は
わたしが描くはずでした
その頁がひらく度
しだいにやるせなく
しらんでしまい
あのひとの童話
抜き出した棚に戻しませんでした


帰り道は晴れていて
すっかり覚えてしまった物語をつぶやくと
齧りかけの月
歪んでゆきました
置き去りの絵本
店員さんに見つかる前に
誰かが手にしてくれるでしょう
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