北の亡者/Again 2012霜月/たま
 
 も吉と歩く


何もない冬の午後
も吉と歩く
はたちの頃 一年ほど日記をつけた
何も残せず ただ消えてゆく日々が
とてもこわかった
時間はたっぷりあったのに

いつもの散歩道
水路は涸れて 空の色も映らない
メダカや鮒はどこへいってしまったのか
雑草のタネを顔にいっぱいつけて
も吉は糞をしている
何も残せないからといって
あんなに苦しむなんて

冷たい季節風が
わたしの生命をあらう
よく生きてきたね
いろいろあったね
まだまだつづくよね
そんなふうに呟いては
トントンと背をたたくのはきっと
北の亡者にちがいない
冬は蘇生の時

今日は何も残
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