愛情の胃袋/三田九郎
 
おなかいっぱいだからいま本読むとたぶん気持ち悪くなる

書店を回遊しているとき耳に入った女子の台詞

そんなふうに思ったことはなかったけれど

満腹だと確かに本は読めないかもしれない

読書に限らず、たいていのことは手につかない気がする

腹何分がよいのか、人それぞれかもしれないけど

めいっぱい満たされてしまうのはきっとよろしくないし

おなか以外で満たされうるものは、そう見当たらない

愛情いっぱいか、ちょうどよいか、足りないか

体感できる胃袋があればいいのに

君との距離に ときどき 

手放されそうな風船の気分になる

風の強い日
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