インド人 吉田  (後)/salco
 
の建立と刻んであるのがわかった。日本語の辞書で調べてもらうと二
百年前、見かけほどは古くなかったのだが、馬頭観音のサンスクリット名は
ハヤグリーヴァ、何とヴィシュヌの異名であった。

 吉田氏は両肘を直角に曲げて瞑目し、盆でも抱え持つような姿態と声量に
通行人が目をくれるほど一心に、その長い脚と不釣り合いなほど太い胴を折
ってしばしの時を勤行する。有と無、生と死、空と地のあわいで独り神々に、
感謝をあるいは贖罪を、何であれ今日も捧げている。
 祈りというよりこれは一つの対話、人間の敬虔という自然調和の姿であろ
う。こうして彼は完全無欠のインド人である。

注釈
バガヴァッド・ギーター … 神話「マハーバーラタ」の一部



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