曲がり角の金木犀/miruki
その日消えそうなわたしは
透明になって歩いてた
通りすがりの犬が
おん!
と、高いような低いような声で
わたしを見ながらひとこと吠える
“しっかりしろよ”
曲がり角を曲がったら
突然匂いがやってきた
あ、金木犀
昨日まではなかったし
おそらく何日かしたら無くなる
一期一会の金木犀
甘い甘い匂いは
わたしに
今
を教えた
消えそうだったわたしは
もう透明ではなくなって
すっかり
オレンジ色に染まりながら
たしかに
そこにいて
また、歩き始めた
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