オムレツみたいな猫の死骸/ボトルシップ
その年の中でも一番の冷え込みを見せた冬の朝、
いつもの駅への曲がり角で猫の死骸を見つけた。
キンッと張り詰めたような冷気の中で、真っ黒なアスファルトの上で、
その死骸は透明な毛布にくるまれていた。
綺麗なままで、一切の雑菌や汚れを感じさせない金色の毛並み。
「焼きたてのオムレツみたいだな」って思ったのはきっと朝ごはん食べてなかったからだ
僕は思わず触れたくなって、柔らかそうなお腹に手を伸ばしたんだ。
冷たい。
安らかな顔、温かい部屋で主人の膝の上にいる時のそのままで。
神聖さ。
ふいに電柱の上からいるはずない天使の視線を感じた。
天使は金のラッパを朝の空に目一杯吹き鳴らしたけど、
車道の喧騒が直ぐにかき消した。
僕はその時、得体の知れない衝動を感じた。
彼は多分笑いながら僕を見てたのだ。
でもそれに身を任せるのが怖かったから、
自分が何をすべきか知っていたのに、
何時も通りの電車に乗って、何時も通り学校に行った。
いつも通りの冬の朝のことだった
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