アルバム/小原あき
 
あなたが珍しく
自ら自分のアルバムを持ち出してきたから
少し不思議だった
「なんとなく」
なんて言うけど
これまで一度も
開いて見せたことなどなかったのに

あなたのアルバムには
当然のように
息子にそっくりのあなたがいて
若いころのお義父さんや
お義母さんがいた

何気ない昔の風景
たとえばそれが
わたしのアルバムだったら
笑って終わっていたのだと思う

あなたは少し泣いていた
もともと泣き虫だから
たいして驚きはしなかったけど
いつもは笑ってからかうのに
今日はそんなこととてもできない

子煩悩のあなたと結婚して
こんなに胸が締め付けられたことはない

親が亡くなるってこういうことなんだ
アルバムをとっくに閉じて
寝息を立てている息子の横で
優しい顔をしているあなたを見て
わたしはなんだか
あなたを少し遠くで
近く感じた



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