おっさんのブルース/まーつん
て
酒を注いだグラスの底に
かつての少年が溺死していく
自分自身だったはずの少年が
おっさんのブルース
短調(マイナー)でも長調(メジャー)でもない
苦味と甘みが程よく入り混じった
どっちつかずの旋律が
これほどよく似合う生き物も 他にいまい
肩の線は 失意の重みでうなだれて
生え際は 譲歩の分だけあとずさる
世の中という悪女の
わがままに付き合い続けて
天国の口座に積み立ててきた
良心の残高は目減りする一方だ
ここらで一発ブルースでも歌わなきゃ
やってられないというわけさ
天使にそっぽを向かれたら
悪魔に愛想をつかれたら
お月さんだけが道連れさ
疲れたおっさんの帰り道
夜空を見上げて口ずさむ
おっさんのブルース
おっさんのブルース♪
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