おっさんのブルース/まーつん
 

酒を注いだグラスの底に
かつての少年が溺死していく
自分自身だったはずの少年が

おっさんのブルース
短調(マイナー)でも長調(メジャー)でもない
苦味と甘みが程よく入り混じった
どっちつかずの旋律が
これほどよく似合う生き物も 他にいまい

肩の線は 失意の重みでうなだれて
生え際は 譲歩の分だけあとずさる

世の中という悪女の
わがままに付き合い続けて
天国の口座に積み立ててきた
良心の残高は目減りする一方だ
ここらで一発ブルースでも歌わなきゃ

やってられないというわけさ

天使にそっぽを向かれたら
悪魔に愛想をつかれたら
お月さんだけが道連れさ

疲れたおっさんの帰り道
夜空を見上げて口ずさむ

おっさんのブルース

おっさんのブルース♪

戻る   Point(8)