忘却希望者/ドクダミ五十号
水を噛む 答えは無いが トリアエズ
口付けの 余韻を消そう スベキコト
無味無臭 受け入れ新た ワスレサリ
記憶とは 見ずにて流す ムカンドウ
味気なし 口ののこりは イニオチタ
面だけに ぽつり憶えの カンカクヨ
忘れたかった記憶を内包した
顔面の一部分を指で触ってみた
冬の外気の乾燥を表しているが
それでも柔らかいのだった
触られたそこは鋭敏でもあった
主人の憂鬱など知らぬふりで
水を含んで消したはずの味が
分泌され眉根を寄せる
味も匂いも歯応えも無いもので
上書きは出来無いのであると
思い知ったのであったが
それよりも唇の記憶の確かさに
冬枯れのすすきの原の様な
寂しさを憶えて
気がついたら
涙を流していた
戻る 編 削 Point(1)