カップボード/
草野春心
カップボードのガラスに
葡萄の果実が映しだされる
一粒ひとつぶ、
丁寧に描いたみたいに
時計の針の刻む音が
穏やかに年老いてゆく間
ホテルから盗んできた一冊の聖書が
きみの抽斗のなかで
透明に腐敗してしまう
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