静脈/
草野春心
頭の中に
一匹の犬が眠っている
擦れてしまって読みとれない
古い名札のついた小屋で
静脈のほそい暗がりを
血液がそっと滑ってゆく
夜、
この世界にある
幾つもの扉
そのうちのひとつだけを開けて
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