トオノウ/ねなぎ
蟷螂が一匹
柱にしがみつき
鎌を立てている
手を伸ばすと
鎌を上げ
こちらを睨んだ
昔に二人で
虫を取ったこともある
何時しかすれ違い
喧嘩もしなくなった
何かにつけて
比較されて育ち
兄を見習えと言われ
優秀な兄に
反発するように
両親に反抗を繰り返し
ついには諦めた
鎌では木も切れないが
脆弱な鎌は
人を傷つける
父は殴る事も無くなり
母は時々泣き
何時の間にか
何も言われなくなった
兄は存在を忘れたかの様に
話す事も無くなった
兄は大学を卒業すると
父の会社に入り
家を継ぐことを決め
結婚も決まった
昔に虫を
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