光冨郁也詩集『バード・シリーズ』あとがき/葉leaf
 
み付こうとしない。読者にぶら下がろうとしない。読者を貫こうとしない。ただひっそりと生えている植物のように、読者に何かを積極的に投げかけようともしないし、読者から何かを積極的に受け取ろうともしない。現代詩には、明確に意味を持たないにもかかわらず読者に積極的に訴えかけようとするものが多いが、光冨の詩はそれと正反対で、明確に意味を持つにもかかわらず読者に積極的に訴えかけようとしない。ある種の宗教は禁欲的であることにより大衆に媚びようとする。光冨の詩にはそのような媚がない。光冨の詩は禁欲を標榜する宗教よりも禁欲的であり、その絶対的な禁欲がとても美しい。


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