家族写真?デッサン /前田ふむふむ
り
それが父の死であり
その肉体の灰のなかから
所属にかぎりなく接近して
いくつもの稜線を流れながら
わたしは なお 白い乳房に欲動するのは
欠けているからではない
欠けているものが なんであるか
分からないから
わたしの思考は
足元から透けていく
新しいパソコンが届く
取扱説明書をよみながら
わたしは ぶきようであるとおもう
この手のさきまで
この指のさきまで
わたしのあらゆる力学が
蛍光灯のしたで 虫のように這っている
新品の書棚は 高々とそびえていて
渇望の果てにみえる
朝が遠い場所にたっていた
「あれが クニミ峠だね」
「うん 遠いね
すこし休んでからいこうよ」
ひつじ雲が
ゆっくりと流れている
ありきたりなことばが
降りつもる場所が 寝返りをうつ
整理オンチ 整頓オンチ
捨てられない「この隅に」の
あたたかみのなかで
静かに眠っていて
わたしはもう
未知の数式の空を
流れている
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