正気の沙汰/ただのみきや
霙と嵐と雷鳴で
十一月の夜が揺さぶっている
手のうちなんざ知れたもので
瞳は渇いたまま空を切る
初雪が覆った小さな棺
添い寝をしたくてもできなかった
小さな棺がゆらゆらと
時の浪間を漂って
詫びを入れるか十一月よ
別におまえのせいではないさ
寒くなったら痛みだす
体中が呻きだす
年中捻挫の足首やこっぴどくやられた左膝
仙骨歪みの腰痛に長い付き合いの偏頭痛
冷気が沁みるのは知覚過敏の歯だけではない
潔癖症で拭きすぎた尻までひりりと痛みだす
中でも一番痛いのは四年前に切り取られ
小さく萎縮した心
鳴くことを知らない生き物が漏らす呻きのように
魂と容
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