無音変奏曲/由比良 倖
あなたは見えない涙を流して泣く。未来がないのだ、と。すべてのドアは閉じられてしまった。窓を開けても、きっと見えるのは、ここよりももっと暗いところだ。音楽は盗まれてしまった。私はもう何も感じない。何も感じない。
標本を並べる。小さなワニの剥製なんかを。理科室にあった、それは、まるで生きているみたいだった。女の子たちが呼んでいる。僕はエアガンを用意する。壁に並べられた、思い出は見えない。見えない方に向かって、僕は虐殺を繰り返す。
ここは昔、僕の子供が住んでいた平面/平原だ。宇宙はひろくひろくどこまでもどこまでもたいらたいらだ。気持ち悪くなったので、僕は自分宛の脅迫状に返礼を送る。誰かがドア
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