木箱と旅先の少年 (夢喰植物)/乾 加津也
 
木箱の扉は
下辺が蝶番で、上からゆっくり開き
外に倒れてスロープになる


岸壁づたいに太い蔦
滑車一本で昇降できる
ロッジ部屋のような
木箱のつくり


+ + +


古いブラウン管の前に並ぶ
野生のように毛皮を巻きつけ
缶を抱えた
利発な少年と順番を待っている
これから
タレント司会者が出題するゲームに挑戦するらしい
司会者はいう
少年の缶の中の石を地面にまいて素手で拾いなさい
わたしはもっていた財布を投げだして両手で小石を掬いあげた
少年はわたしより多くの小石を拾いつつ
わたしの財布も同時に拾い上げて笑ってそれをわたしに渡した
(思い返せば
[次のページ]
戻る   Point(12)