誰の為でもない儀式ばった振る舞い/深水遊脚
 
部屋の灯りを消して
几帳面にいれたドリップコーヒーのカップの上に
角砂糖を置いた匙を手で支え
ショットグラスのブランデーで砂糖を濡らす
柄の長いライターで砂糖に灯をともし
青い炎を見つめる

匙の熱が手に伝わる孤独
力ない炎は狂気を焼くことなくその一部を照らす
匙の上の炎をコーヒーに垂らす手先に未練はなく
滞りなく始まる 暗闇との対話

分かち合う第三者はいない
虚飾に満ちた世界に
ありふれた物語を付け加える義務から
誰もが逃れたいのだ

完全な闇のなかで
カップにふれようと宙をまさぐる
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