風が来るところ/木の若芽
 
「風が来るところ」
           木の若芽


雲ひとつない空に
しばらくしてひとつだけ見つけた雲は
空に浮かんだ理想郷の島に見えた
ああ でも今日はここが理想郷だ
あの雲まで行かなくても
この木々茂るしずかな風致区が

秋の陽の光を吸い込んだ池の水面は
ゆっくりと泳ぐ魚に揺れて
映る木々がそれに揺れ
見つめるわたしの心がそれに揺れ
ゆらゆらと自然をつつむ

植物が光の方へ伸び 水の方へ伸びるように
わたしは目をつぶっても街ではなく自然の方へ歩める
木が差し招く方へ

遠くから渡ってきた鳥たちを迎えて
一段とにぎやかになった秋の林
こつこつ 見えないところできつつきもたたいている

ハイネケンの黒ビールで
わたしはなぜか茶色く小さいつぐみになったよう
それとも まだ 人なのかな


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