最後の接吻/*くろいうさぎ*
白雪姫は皇子様の口付けで起きる
君は冷たかった
只寒かった
一月だから寒いだろう
でも あの時は
北極に居るみたいだった
寒かった
霊安室は初めて入った
君は白い布で覆われていた
来る人来る人皆泣いていた
私は寒かった
涙は余り出ず兎に角寒かった
霊安室で独りになった
隣の部屋から クスンクスンと涙を流す音が聞える
私はただ君の顔をずっと見ていた
寒くて寒くて体の震えが止まらなかった
誰も居ないからと
君に口付けをした
刹那
寒さが退き
涙が溢れた
君の顔 君の髪の上にポタポタと涙が落ちた
兎に角涙が止まらなくなった
さっきの妙な寒さ震えは
「我慢」だった
世界は物語じゃない
君が喩白雪姫でも
私は皇子様じゃないのだから
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