部屋のなかは遠くて明るい/由比良 倖
 

カモメが鳴いている下を空が飛んでいた。水、用意していきます。貴方の前で涙が涸れるといけないから。塩水、用意していきます。天気予報は大体見ないの。消しゴムを転がして一応は予測するけれど、傘も、長靴も、雨は、あれは天使の涙だから、だから晴着で向かえようと。泣いたあとは、眠いので、眠いのは泣いたあとだ。ねえ、チキンレースで、僕はよく負けたよね。落ちて、負けたよね。一応、ブレーキは踏んだんだけど、死ぬ前になると、君がずっと勝者に相応しく思えてさ、そして僕は敗者であることに慣れることさえ出来なかった。カモメが鳴いていたので、僕はその下に空の青を引いた。


将棋に勝つ方法を教えてあげる。自分の
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