刻詩病/高原漣
 
かかなくては、死んでしまいます。

うたわなくては、死んでしまうのです。

髪も、膚もまっ白い、ゆう霊のやうな少女は、さう云ひました。

あかい硯を右手に、まっ黒い蝶々(てふてふ)の翅に筆をはしらせます。

すると、蝶々(てふてふ)はたった今、いのちを得たかのやうに

にび色のそらへ、とび発ってゆくのです。

まっ白な少女は、今日も甘やかな詩をかなでます……
戻る   Point(1)