宝石/小鳥遊儚
髪からつま先まで、淡いものに包まれている。
あれはなんだろう。彼女を包む、淡い層のようなもの。
あの光の層によって、私は彼女を世界を別にしている。
あの淡い光の膜が、彼女を生身にしないのだ。
夜よ、私の心を読まないで欲しい。
ただ側に居て、仕えているだけの男だと信じさせておくれ。
私はベールに分け入った。
唇を押し開き赤い石を取り出した。
月が見ていた。
私は自分の口を開け、石の味を確かめた。
夜よ。静まれ。
私は顔を熱くしてそこを立ち去った。
部屋の外の腰掛けに座り、動悸を堪えた。
口から石を出し、手のひらに乗せて眺めた。
人でなしになってゆく。壊れ始める音が聞こえる。
彼女の笑い声が聞こえる。
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