彼等/佐々宝砂
1.
とても静かな村だった。今もきっと静かだと思う。
お祭りのときだってそんなに大騒ぎにはならなかったの。
屋台もちっぽけなのが五つくらい出ただけで。
綿菓子とお好み焼きと鯛焼きと。あとは何だったかしら、
たぶんフルーツジュースと。りんご飴か何か。
それでね。綿菓子を買って帰ったの、だけど、
綿菓子買ったのがばれると怒られるからお寺の境内で。
お祭りだから神社には人がいっぱいいるの、
でもお寺にはだあれもいないの、いつもそうなの、
それで私はお寺の境内のベンチで綿菓子を食べていた。
そうしたら、そのひとがやってきたの。
姿勢が少し悪かったけれど普通のひとに見えた
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