夜めぐる夜 ?/木立 悟
 




咲きつづく花となった左手を
冬へ冬へかざしながら
森の上から去らぬ影を見る
同じ翳り 同じ霧
こだまのように立ち並ぶ


漂いは追い
追いは漂う
空が空をくぐるのを
雨は片目であおぎみる
双つの色が
降りつづく


窓の姿 瑞々しい影
滴の柱 滲む点滅
文字と文字のつらなりが
素足に差し出す みすぼらしい靴


もうすぐここからいなくなると
わかっているからやさしいのだ
滴の壁の滴には
滴の数だけ冬があふれ
すぎる姿を隠してゆく


北の空には光の虫が
新たな星を浮かべている
冬からも風からも
わずかに離れ 巡りゆく


遠去かる背を
雨が上書きしてゆく
ところどころ縦に乱れ
むらさきの奥のむらさきをゆく


左手は咲き 左手は咲き
また左手は咲き 消えてゆく
冬に照らされ生まれる影に
そよぎつづけるかたちを残して






























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