冷たい雨/ただのみきや
 
きみのことばは

秋の冷たい雨のようだね

仄かな愛の燃えかすを

ひとつ ひとつ 丁寧に

つまむように消して行く

夏の陽射しに彩られた

一輪の記憶が今しがた

明けの女の幽霊のように

煙みたいに融けて逝った

この街はよそよそしく

ぼくは望まれない魚のように

目もなく舌もないまま捨てられて ただ

もがく度に輝いていた夢の欠片が剥がれ落ちた

きみは読み通せなかった詩集

まるでひとつの死のように閉ざされていた

そしてぼくはベランダに残された風鈴のように

消失したものを取り戻そうとするが

寒々と濡れたまま

詠おうにも詠えない

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