『切断』/あおい満月
ゥーを施した手、
不思議なことに
どれも血にまみれていない
切られたわたしの左手には
薬指に指輪をしている
流れ続ける血、
目眩を起こす脳髄
わたしの手は何処にあるのだ
半狂乱で掻き分けるそれらの中から
ころんと音を立て
何かが落ちた
それは埃にまみれた
血に濡れたわたしの左手
銀の指輪だけが
微かに光っている
わたしは安堵に
気絶する
*
目を覚ますと
シーツに血の痕が滲んでいた
昨夜わたしは、
剃刀で体毛を剃ったのだ
そのときに左手首に傷をつけた
血は止まらなかった
あろうことか、
母親も指に怪我をしていた
大根を輪切りにしたとき
左人差し指を切ったのだと
捨てられた大根の皮に
赤黒い血が滲んでいた
わたしはいつか
切り落とされる
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