冬の雨/木立 悟
ひとしずく
ただどこまでも得るだろう
書かれなくなった言葉
階段
奇妙につづく
昼の夢
ある日さらさらと行方は途切れ
行方のままに置いていかれる
花を踏めというが踏めないのだ
そうしていくつもの
心と脚を失ったのだから
答の先の炎に飽きて
崖の花を通りすぎた
手のひらのような行きどまりを
静かに静かに握り返した
曇と水の明るさのなか
光の名前を持つひとと
ほんの少し共に歩いたあいだだけ
背に羽に虚に影は在った
問いは問いでなくなるだろう
波も歩みも 応えはしないとわかったときに
はじまりの爆発のみなもとに
花のかたちを見たときに
冬の雨が夏の雨を抱き
あらゆる色の破裂がそそぎ
ひとりまたひとり立ち尽くし
影は泣くものの盾となる
誰もいなくなり
音もいなくなりなお
手のひらは手のひらに握られて
新たな星を放ちつづける
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