境界B/緋月 衣瑠香
「名前」を守れなかった
授かった願い事と反してしまった
誰も知らないあいつのせいで
2009年10月30日 覚えていない
その夜のことは何も覚えていない
あの子は電車にフライング
「あの子はあの日の月みたいに欠けてしまった」
そんなことはない
だっていつだって月は丸いままだ
陰りはいつか終わる
あの子だって
いつかそうなったかもしれないのに
私の心を分け与えていたら
あの子は丸いままだったのかもしれない
3つ年下のあの子へ
こんにちは
私は20歳になりました
どうか私に赤い林檎をくださいな
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