薄紅いに染まりし夕暮れ/石田とわ
 
    サンダルを履いた踵は
    うっすらと紅く
    右手のビニール袋からは
    ネギの緑がとびだしている
    歩くたびにガサゴソと
    にぎやかなさびしげな
    音をたて
    その後ろ姿は
    夏の夕暮れそのものだった
    
    小路に咲く野の花を
    手折っては
    ぶらぶら歩く姿は
    遊び呆けて家に帰りそびれた
    子供のようで
    髪の短いうなじは日に焼けて
    夏草のようだった
    夕暮れが終わるころ
    ようやく振り返り
    手折った花を要らぬげに
    くれたものだ
[次のページ]
戻る   Point(6)