うしろのおっさん/川上凌
 
学校指定のカバンとエナメルを横に置くと、どうしてもふたり分の座席を占領してしまう。日が落ちきって、人も疎らなバスの車内がありがたい。いくら荷物が多いと言えど、ふたり分を占領することはなかなか勇気がいる。
今日は後ろから2番目の席だから、バス全体が見渡せて、すごく嬉しい。嬉しいというのは、いつの間にか、バスの中の人間観察がクセになっていたからだ。(運転手さんも、人それぞれのアナウンスと運転の仕方があるのだ。)

地面の起伏に合わせて、バスが ごうん と揺れた。

ふと気付くと、いちばん後ろの席のおっさんがぶつぶつと何かを呟いていた。田舎ほど、こういう人はよくいる。
わたしのちょうど後ろに
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