パス/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
これ飲んでいって」
「……ありがとう、おばさん」
奥山は少しためらったが、コップを手渡され、一気に飲んだ。
「おいしかったです」
「疲れるだろうけど、また遊びに来てね」
「はい」
「奥山、じゃあ気をつけて」
「また明日学校でな」
奥山が帰ると、晴田は表情を消して部屋に引っ込んだ。
晴田の母親は奥山が帰った後、物も言わず部屋に引っ込んだ晴田を少しだけふがいないと思ったが、そんなふがいない晴田につきあってくれる奥野に心の中で感謝をした。
母親は友達の少ない息子を常日頃から心配していたので、奥山に強く感謝していたのだった。
母親は、ずっとこの時が続けばいいと思った。
結局二人が中学を卒業するまで、他の仲間はサッカーの練習に加わることはなかった。
中学を卒業すると、二人はそれぞれ別の高校へ進学した。
その後成人を過ぎるまで、お互いがサッカーの練習をする事はなかった。
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