アソコ伝 22章/花形新次
 
オナラダの丘はナメッチョーレの住人から
世界の果てだと思われていた
オナラダの丘の先は切り立った崖で
空は常に厚い雲に覆われていた
夜になると漆黒の闇に包まれ
辺り一面何も見ることが出来なかった
ナメッチョーレのジョビーノは
15歳のときに少年らしい好奇心に駆られ
独りでオナラダの丘に登った
ナメッチョーレの住人が総出で捜したが
ジョビーノはそのまま地下鉄に乗り
表参道に行ったきり消えてしまった
ナメッチョーレの住人は
これはオマン(駄天使)の誘惑に負けたせいだと噂した
それを聞かれたタマンキは弟子のウマシーエに
「オマンがいるのかどうか、ウマシーエ、おまんが行って
確めて来なさい」と言われた
ウマシーエが暗所恐怖症を理由に躊躇していると
他の弟子たちが、私がやりますと次々と名乗り出た
それを見たウマシーエが、でしたら私がと意を決して
手を上げると、他の弟子たちは
ドーゾ、ドーゾと言った
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