私はヘルメスの鳥。私は自らの羽を喰らい、飼い慣らされる。/木屋 亞万
 
菅原孝標女が孝標女という名前しか残せなかったのと同じように
私の名前はヘルメスの鳥
藤原道綱母のようにヘルメスの親鳥ともなれば矜持の一つも持てるだろうが
あわれ私はヘルメスの鳥
バーキンでもグレースケリーでもない
エルメスのブランドとは縁遠い
名のある鳥の少なさと名のある鳥の道化具合に嫌気が差す
私は曲芸まがいのことはしない
ヒトに胡桃を乞いもしない
上品を装うのも下品に徹するのも居心地が悪くて敵わない
私は鳥として鳥らしく日々を過ごせれば良い

名前などというものは本来必要ない
鳥として病んでいるものが持つものだ
名前を持つことは鳥らしからぬこと
私はもはや鳥ではな
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