ORION/マーブル
 
えて苦しむその姿は
満ち潮が訪れる時のような
浅ましい女の罪だったのだろうか
同罪を求めなくとも男の瞳は深い夜の海の色をしていた


二人は硝子になった
粉々に弾け飛んで
誰かを傷つけた
そんな痛みは猫のひっかき傷と同じくらいで
私は爪を丁寧にしまうことすら上手に出来なかった
それでも痛みは紅く残るばかりで
少しの苛立ちと震えを覚えた




真昼の月はモノクロームの写真となった
贅沢な嘘に愛を燃やすことは出来ない
悲恋の森のなかは薄暗い
其処を彷徨えば二度と戻れなくなってしまうよ
ちいさな焚火がそう言っていたんだ


私の愛は冷えきっていて
吹雪のなかで凍えることしか出来ない
それを溶かすのは何ものなのか
いまだにわからない


終わりの見えない詩に私は途方もなく
呆れかえってしまう
冷たい女は熱情に溶かされる一瞬を待ち焦がれる
雪の結晶は悲しくもなく嬉しくもなく
あっという間に溶かされることを待ち望んで



冬の訪れを
静かに
みあげている














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