秋風がさようならと言っている。/元親 ミッド
 
らず
キミには、僕の話す言葉がわからないようだった。
だけれどそれでも、僕らはお互いに
お互いの言葉でしか話そうとせず
会話しているふりだけしていた。
僕らの共通語って、どこにあるのかなぁ。


わかり合えぬさみしさを
人は、わかりあえているという
催眠術で乗り切ろうとしていて
或る日、実はわかりあえていないことに
はたと気がつき、救いようのない孤独に襲われる。
本当は、はじめからわかりあえていなかったのに。
相手を指さして、切実に訴えるのだ。
「あなたは変わってしまいました」と。


ただ一羽、乾いた秋空の高い処をすべっていく鳥は
これからどこへ行こうと言うのか。
煙草の煙は、今度は広がる網のように拡散してみるのだけれど
その鳥に触れることはやっぱりできず、いらつくように舌打ちをした。
誰にも、さびしさと自由とを、同時に手に入れた
一羽の鳥を捕まえることはできなかった。


秋風がさようならと言っている。
一々、挨拶などいらぬのに。
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